異臭症・嗅覚障害の時、嗅覚細胞はどんな状態?回復に向かってどんな変化?

2025/06/04

 こんばんは!健康堂の冷です。先日嗅覚障害の患者さんから「異臭症・嗅覚障害の時、鼻粘膜の嗅覚細胞はどんな状態?回復に向かってどんな変化?」と聞かれました。よく聞かれる質問ですから、同じ悩まれる方に参考されるよう説明します。


1. 異臭症・嗅覚障害時の鼻粘膜と嗅覚細胞の状態

嗅覚障害は、匂いを感じる能力が低下(嗅覚低下)、消失(嗅覚脱失)、または異常(異臭症:本来と異なる匂いを感じる、刺激性/自発性)する状態です。鼻粘膜の嗅覚細胞(嗅上皮に存在)は、匂い分子を感知し、嗅神経を介して脳(嗅球・嗅覚中枢)に信号を伝えます。この過程に異常が生じると嗅覚障害が起こります。

鼻粘膜・嗅覚細胞の状態:

・呼吸性嗅覚障害: 副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎による鼻粘膜の腫脹・ポリープで、匂い分子が嗅上皮に届かない。嗅覚細胞自体は正常だが、物理的閉塞により機能不全。

・嗅神経性嗅覚障害: 風邪や新型コロナウイルス(COVID-19)などのウイルス感染により、嗅上皮の嗅覚細胞や嗅繊毛(匂い感知の突起)が炎症・損傷を受ける。特にCOVID-19では、嗅上皮の支持細胞に発現するACE2受容体を介してウイルスが侵入し、嗅覚細胞の機能が阻害される。異臭症では、嗅覚細胞の部分損傷により、匂い信号が誤って伝達され、異常な匂い(例:焦げ臭)が感知される。

・中枢性嗅覚障害: 頭部外傷や脳疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病)による嗅球・嗅覚中枢の障害。嗅覚細胞は正常だが、脳での信号処理に問題

COVID-19関連の嗅覚障害では、鼻粘膜の浮腫や炎症が主因で、嗅覚細胞の支持細胞がダメージを受け、嗅神経の伝達が阻害される。神経自体の損傷は少なく、早期回復が多い。


 


2. 回復に向けた鼻粘膜・嗅覚細胞の変化

嗅覚障害の回復は、原因や障害部位により異なります。嗅覚細胞は約3060日でターンオーバー(再生)するため、早期治療が重要です

・呼吸性嗅覚障害: 副鼻腔炎治療で鼻粘膜の腫脹が解消され、嗅裂(嗅上皮の部位)への匂い分子の到達が回復。12ヶ月で改善するケースが多い。

・嗅神経性嗅覚障害: ウイルス感染後の嗅覚細胞の損傷では、炎症の収束とともに嗅上皮が再生。嗅繊毛が再び匂い分子を捉え、嗅神経の信号伝達が回復する。COVID-19では、軽症の場合、数週間で約44%が改善、1年で約80%が部分回復。異臭症は、嗅覚細胞の部分再生中に誤信号が減少し、正しい匂い感知が戻る過程で解消

・中枢性嗅覚障害: 脳の損傷が原因の場合、回復は難しく、長期(12年)かかるか、完全回復しないことも。

 嗅覚リハビリテーション: 嗅覚刺激療法(アロマオイルやコーヒー粉で匂いトレーニング)により、嗅球への電気信号が促進され、嗅覚細胞の再生や神経接続が強化される。

 



3. 鍼灸治療による治癒メカニズム

鍼灸治療は、特に呼吸性および嗅神経性嗅覚障害(風邪、COVID-19、ストレスが原因)に有効とされます。

東洋医学的アプローチ:

・嗅覚障害は「鼻塞」(鼻の閉塞)に関連し、東洋医学の経絡の肺経、大腸経、肝経、脾経のバランス異常が原因とされる。鍼灸はこれらの経穴(ツボ:例、鼻通、迎香)を刺激し、気血の流れを改善

健康堂では、脈診・腹診で体質を評価し、トウ氏奇穴や奇経法を用いて嗅覚細胞の血流を促進。鍼灸は局所の血流を増加させ、鼻粘膜の炎症を抑制。嗅上皮の酸素供給や栄養環境を改善し、嗅覚細胞の再生を助ける自律神経の調整で交感神経の過緊張を緩和し、鼻粘膜の炎症を軽減。

 ・「鼻三針」は、鼻部の特殊ツボで嗅覚中枢を活性化。嗅覚細胞の神経伝達を強化し、回復を促進。

 ・自律神経のバランス調整により、ストレスや免疫応答の過剰が抑制され、嗅覚細胞の損傷が回復しやすい環境を構築。


最後、鍼灸治療の限界のことも話します、 私の経験上、中枢性嗅覚障害や加齢性障害は鍼灸での改善が難しい。またほかの種類の嗅覚障害・異臭症も時間が経つと共に回復の難易度が上がります。発症して数年後来院される患者さんもいらっしゃいますが、効果は上げにくいのは現状です。早期治療・早期のリハビリを強くお勧めします

 

                        健康堂 久我山院

                            西荻窪院