突発性難聴の原因ー有毛細胞の損傷と鍼灸治療

2025/11/17

 こんばんは、健康堂の冷です。今回突発性難聴の原因ー有毛細胞の損傷、鍼灸治療の効果についてお話しします。

 突発性難聴の主な原因は、まだ完全に解明されてないですが、内耳の有毛細胞とその周辺微細循環の急激な障害に関わるらしいです。


1.  内耳微小循環障害(最も有力説)
ストレス・血圧変動・血栓などで蝸牛動脈が痙攣・閉塞 → 有毛細胞への酸素・栄養供給が途絶え、虚血性障害で有毛細胞が変性・壊死。

2.  ウイルス感染
ヘルペス系ウイルス(特に水痘・帯状疱疹ウイルス)が内耳に潜伏再活性化 → 炎症により有毛細胞と螺旋神経節が直接障害される。

3.  免疫異常・自己免疫反応
内耳組織に対する自己抗体産生で有毛細胞が攻撃され脱落(まれだがステロイドが劇的に効く例はこのタイプ)。


さて、有毛細胞はどんな働きでしょうか

有毛細胞は内耳の蝸牛(かぎゅう)内にあり、音を電気信号に変換する重要な感覚細胞です。コルチ器に存在し、外有毛細胞(約12,000個)と内有毛細胞(約3,500個)に分かれます。

•  外有毛細胞:音の強弱を増幅し、微細な音を感知する能力を高める(能動的増幅)。

•  内有毛細胞:音の周波数情報を脳に伝える主役。聴神経とシナプスでつながる。 有毛細胞は音の振動を機械的刺激として受け取り、細胞頂部の立体繊毛が傾くことでイオンチャネルが開き、電気信号が発生。これが聴神経を経て脳に伝わり「聞こえる」となります。有毛細胞は一度壊れると哺乳類では自然再生しません。


損傷度合いによる回復状況

1.  軽度損傷(一時的な機能低下)

•  血流障害、ウイルス感染、ストレスなどで有毛細胞が「疲弊」した状態。

•  立体繊毛の傾き異常やシナプス伝達効率低下が主。

•  自然回復率:約60~70%(特に発症1週間以内にステロイド治療開始の場合)。

•  2~4週間でほぼ完全回復するケースが多い。

2.  中等度損傷(一部の有毛細胞が変性・壊死)

•  外有毛細胞を中心に不可逆的損傷。

•  回復率:30~50%程度。低音障害型は回復しやすいが、高音急墜型は予後不良。

•  回復しても「音は聞こえるが歪む」「言葉の聞き取りが悪い」状態が残存しやすい。

3.  重度~不可逆損傷(広範囲の有毛細胞脱落)

•  内有毛細胞も大量に失われる。

•  自然回復はほぼ望めず、治療しても10~20dB以上の改善は稀。

•  高度難聴~聾に至るケースが多く、補聴器や人工内耳が検討される。


鍼灸治療すると、有毛細胞の回復にどんな効果が出ますか


•  軽度~初期(発症1~2週間以内) → 効果が高い傾向

•  耳周囲、頸部血流改善、自律神経調整のツボが有効。

•  血流促進・浮腫軽減・ストレス軽減により、有毛細胞の回復環境を整える。

•  ステロイドとの併用で回復率・回復速度が向上したという臨床報告多数。

•  中等度(発症2~4週間) → 効果は個人差が大きい

    ・有毛細胞の損傷まだ軽度の場合回復するケースはまだ多い

•  既に一部の有毛細胞が死滅している場合、完全回復は難しいが、残存細胞の機能維持や耳鳴り軽減に寄与。

•  週2~3回の治療を1~2ヶ月継続すると、聴力5~15dB改善+耳閉感軽減を実感する人が約4割。

•  重度(発症1ヶ月以上経過+広範囲壊死) → 効果は限定的

•  死んだ有毛細胞は戻らないため、聴力そのものの大幅改善は期待は難しい

•  ただし、耳鳴り・めまい・耳詰まり、頭重感の緩和には一定の効果あり(特に耳鳴りは50%以上で軽減報告)。


 突発性難聴は「発症後なるべく早く(理想は1週間以内)」にステロイド+鍼灸を組み合わせるのが最も回復率が高いとされています。鍼灸は特に軽度~中等度で、残存有毛細胞の保護と血流改善に役に立ちます。重度例ではQOL向上(耳鳴り、耳詰まり対策)が主目的となります。難聴に関する悩みがあれば気軽にお問い合わせください。


                     健康堂 久我山院

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