脊柱管狭窄症の手術後、なぜ痛み・痺れが残るか?鍼で取れるか?

こんばんわ、冷です。お盆休みの終わり頃、皆さんのお過ごしはいかがでしょうか?
現在当院に来院される脊柱管狭窄症の手術後の患者さんが多数いっらしゃいます。
手術後だいぶ回復される方がいれば、痛み・しぶれは取れないあるいは結構症状が残される方もいます。
ではなぜ手術をしても症状が残るか、今日お話したいと思います。
脊柱管狭窄症の手術は、物理的な圧迫を解除することが目的です。しかし手術で圧迫を除去しても、神経そのものがすでに「損傷を受けた状態」になっている場合、圧迫が取れても神経機能は自動的には回復しません。これが術後残存症状の最大の理由です。
1. 神経の器質的損傷(不可逆性) 長期間圧迫されていた神経根や馬尾神経は、脱髄・軸索変性を起こしていることがあります。特に罹病期間が長い症例、術前から高度な感覚障害があった症例では、除圧後も神経再生が追いつかず、痺れが残存しやすい傾向があります。
2. 中枢性感作 末梢の圧迫が長期間続くと、脊髄後角や脳のレベルで痛み信号の増幅が起こり、痛みの原因が「末梢の圧迫」から「中枢神経系の過敏化」へと移行します。これがいわゆる中枢性感作で、原因を除去しても痛みが自律的に持続してしまう状態です。手術単独ではこの中枢側の変化にはアプローチできません。
3. 術後の瘢痕・癒着(FBSS/術後性神経根症) 硬膜外瘢痕組織が神経根を再度絞扼し、新たな機械的刺激源となるケースがあります。
4. 筋膜・筋骨格系の代償パターンの固定化 長期の疼痛回避姿勢により、腰背部・殿部・下肢の筋緊張パターンが固定化し、症状発生源が「神経」から「筋膜性・機械的疼痛」へ部分的に移行していることも多く見られます。
5. 隣接椎間障害 除圧・固定範囲の上下に新たな負荷が集中し、隣接椎間の変性が進行することで、術前とは異なる部位からの症状が出現することもあります。
では手術後の痛み・痺れなどの残存症状について、鍼灸の効果はいかがでしょうか?
①の器質的損傷は、もし神経線維そのものの軸索・髄鞘が完全に破壊された状態で、鍼灸の刺激では神経細胞を再生させることはできません。末梢神経の再生速度は1日1mm程度と極めて遅く、長期圧迫後の変性が高度な場合、再生が追いつかず永続的な感覚障害が残ります。鍼灸による血流促進や自律神経調整は再生環境を「後押し」する程度で、失われた神経組織そのものを回復させる力はありません。
②の中枢性感作は、脊髄の興奮性が持続的に亢進し、痛みの発生源が末梢ではなく中枢神経系内部に移ってしまった状態です。この場合、原因である末梢の圧迫を鍼で緩めても、すでに中枢側で自律的に増幅している痛み信号自体は止まりません。鍼灸単独では改善が限定的になりやすいのが現状です。
鍼灸が有効性を発揮しやすいのは、上記③〜⑤に該当するケースです。特に:
- 筋膜性疼痛・代償性筋緊張:局所への刺鍼で筋緊張を緩和し、可動性を改善することで疼痛軽減が期待できる
- 中枢性感作への介入:鍼刺激はA δ線維・C線維を介して脊髄後角のゲートコントロール機構や下行性疼痛抑制系(DNIC)を賦活すると考えられており、中枢性感作にも一定のアプローチが可能
- 血流改善による神経周囲環境の改善:硬膜外瘢痕部周囲の循環改善により、症状緩和に寄与する可能性が考えられます。
健康堂では、施術前に症状の性質(神経障害性痛か、筋骨格性痛か、中枢性か)を丁寧に問診・徒手検査で鑑別し、改善は期待できるかどうか患者に事前に説明します。最初判断しにくい場合、一定の回数を設け、治療する中間効果も判断の基準になり、予後を予測し、患者さんとコンミュニケーションを取りながら治療のペースと決着点を決めます。
脊柱管狭窄症の手術後でも悩まれる方は気軽に当院までお問い合わせください。
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